2017-02-04
#1:
「春告草(はるつげぐさ)」と呼ばれる梅は、その花の色合いがかくも豊富である。つやのある明るい紅色は「本紅」であり、つぼみはピンクで、咲くと白い色になる花は「移白(うつりじろ)」と言われる。反対に白から紅色になる「移紅(うつりべに)」もある
#2:
作家の円地文子(えんちふみこ)は、桜のうす紅とも、桃のピンクとも違う紅梅の色が好きだと書いている。「いかにも長い冬の寒さに耐えた花の辛抱強さと凜々(りり)しい美しさが含まれている」。年が明けてから神経がささくれ立つニュースが多いなか、ほころぶように咲く梅を見ると心が落ち着く。きょうは立春である
#3:
古事記や日本書紀には記されていない梅であるが、万葉集には119首の歌が現れ、ハギに次ぐ多さだという。中国から渡来し、もてはやされるようになったのだろう。山上憶良(やまのうえのおくら)は〈春さればまづ咲く宿の梅の花独り見つつや春日(はるひ)暮(くら)さむ〉と詠んだ
#4:
自宅近くの公園には紅白の梅が咲き誇っていた。その傍らには桜の木があり、早くも花を一輪二輪とつけていた。玉縄桜(たまなわざくら)という名のその品種は、聞けばソメイヨシノを親に持ち1970年代に育成が始まったという。早咲きの新顔である
#5:
いまや桜の代名詞となったソメイヨシノも、明治以降、その華やかさが好まれて広がった。万葉の時代からの美があり、近代以降の美がある。日本の風景は時代により姿を変えてきた
#6:
まだまだ「春は名のみ」かもしれぬが、季節は少しずつ移ろう。先が見えず変化の激しいときだからこそ、暖かな日の訪れをゆっくりと待ちたい。