圧倒的な権限を握る「本省」と屈従を強いられる「現場」。きのう開示された「赤木ファイル」には、財務省内の中央と地方の力の差が生々しく描き出されていた▼
鳥取、舞鶴など地方の財務局や財務事務所を転々とした赤木俊夫さん。「私の雇用主は日本国民」と語り、公務員てあることを誇りにしていた。その使命感を打ち砕かれたのは4年前。森友学園をめぐる公文書を改ざんせよと本省から命じられる▼
「M事案」。赤木ファイルに収められたメールの件名にそうあった。森友事案と書くのがはばかられる省内の空気が伝わる。「修正版を送付方お願いします」「できる限り早急に対応願います」。本省側の発した命令は事務的で冷たい▼
「備忘記録」。赤木さん自ら書いた文章に目が釘付けになる。「現場の問題認識として既に決裁済の調書を修正することは問題があり行うべきではないと、本省審理室担当補佐に強く抗議した」。この一文にのみ下線が引かれている。理不尽な命令に苦しみ、憤る姿が浮かぶ▼
〈良吏(りょうり)をもってすればなんとか政治はできる。だが汚吏(おり)のもとではいかんともしがたい〉。鉄血宰相ビスマルクの言葉だ。そもそも首相夫人による学園への肩入れが発覚して問題視されたM事案だが、本省内の忖度(そんたく)の末、地方の良吏が命を絶った▼
全518ページ。赤木ファイルの読後感は、どこまでも重く切ない。職務に尽くした現場の公僕をここまで追い詰めてしまうとは。本省なるものの酷薄さに戦慄(せんりつ)すら覚える。
鳥取、舞鶴など地方の財務局や財務事務所を転々とした赤木俊夫さん。「私の雇用主は日本国民」と語り、公務員てあることを誇りにしていた。その使命感を打ち砕かれたのは4年前。森友学園をめぐる公文書を改ざんせよと本省から命じられる▼
「M事案」。赤木ファイルに収められたメールの件名にそうあった。森友事案と書くのがはばかられる省内の空気が伝わる。「修正版を送付方お願いします」「できる限り早急に対応願います」。本省側の発した命令は事務的で冷たい▼
「備忘記録」。赤木さん自ら書いた文章に目が釘付けになる。「現場の問題認識として既に決裁済の調書を修正することは問題があり行うべきではないと、本省審理室担当補佐に強く抗議した」。この一文にのみ下線が引かれている。理不尽な命令に苦しみ、憤る姿が浮かぶ▼
〈良吏(りょうり)をもってすればなんとか政治はできる。だが汚吏(おり)のもとではいかんともしがたい〉。鉄血宰相ビスマルクの言葉だ。そもそも首相夫人による学園への肩入れが発覚して問題視されたM事案だが、本省内の忖度(そんたく)の末、地方の良吏が命を絶った▼
全518ページ。赤木ファイルの読後感は、どこまでも重く切ない。職務に尽くした現場の公僕をここまで追い詰めてしまうとは。本省なるものの酷薄さに戦慄(せんりつ)すら覚える。