あとがき
ご無沙汰しております、三み屋や咲ざきゆうです。前巻から随分と間が空いてしまい、申し訳ありません。そして、このあとがきには作中のネタバレが多数含まれておりますのでそこのところだけご注意ください
まず「学戦都市アスタリスク外伝 クインヴェールの翼」は、これにて無事完結となります。美み奈なとたちの挑戦へお付き合い頂き、ありがとうございました。やや詰め込み気味にはなりましたが、お陰様で外伝でやりたかったことは全部やり切れたかなと思います。
内容的にはチーム・赫かぐ夜やの《獅鷲星武祭グリプス》をその初戦から最終戦である準々決勝戦まで追っており、特に最終戦であるチーム・ヘリオン戦は六十ページを超える分量になってしまったりと我ながら結構がんばりました。本編の《獅鷲星武祭》でもこれほどボリュームのあるチーム戦はなかったと思います。正直、チーム戦の描写は作者としてもかなりしんどいのですが、こんなバトルを描くことはもうあまりないだろうと言うことでがっつりいきました。……まあ、当初の予定では三十ページちょいくらいの予定だったのですが。
主人公である美奈は別枠として、一巻ではニーナの見せ場を、二巻ではクロエ関連のエピソードを盛り込みましたので、この三巻では柚ゆず陽ひとソフィアの活躍シーンが多めとなっております。特にソフィアは割といいところを持っていったんじゃないかなと。
では、最終巻ということですし、せっかくですからキャラクター解説的なものでも。
実の所、企画最初期の段階では主人公は今のクロエにあたる役所のキャラクターでした。
とはいえ、企画書を読み返してみるとこの時点ですでに明朗快活なナックル使いのボクっ子、天あま霧ぎり辰しん明めい流りゆう弓術を使う大和やまと撫子なでしこ、アーネストの妹で人を傷付けられないお嬢様、トランプを模した能力を扱い切れずに利用されているクール系少女と、ほぼ現メンバーの原型ができていたことがわかります(ちなみにこの最初期段階ではソフィアは先輩ではなく一年後輩でした)。ここからブラッシュアップしていく中で作品のコンセプトを王道的な少年漫画に寄せようということなり、そうなるとクロエのような立ち位置のキャラは主人公的な活躍をさせ難にくいということで、一番主人公らしい性格だったナックル使いの子が主人公に昇格──美み奈なとが誕生したわけです。
その美奈は本当にわかりやすく動いてくれる主人公で、作者的にはなんの問題も起こさずどんどん前に進んでくれる優良児でした。本編に比べて話がわかりやすいと言われたことがありますが、それは美奈おかげです。ありがとう、美奈。デザイン的にも一番気に入っていて、小説一巻パジャマパーティのところの挿絵とか大好きです。玄げん空くう流りゆうが躰道をベースにしているのは私の趣味。
クロエは主人公から変わった時に一番大きく設定が変更されたキャラです。とはいえ伝達の能力を使う《魔女ストレガ》という基幹部分はそのまま引き継いでもらったので、作品のキーポジションを担うキャラであることには変わらず、バトルでは司令塔として、日常シーンでも解説・説明役と一番働いてもらった子でした。台詞数ダントツじゃないかな。お疲れ様。できればもうちょっと崩した部分も描いてあげたかったかも。
柚ゆず陽ひは企画最初期からほとんど設定が変わっていない唯一のキャラなのですが、茜あかねさんの漫画版では当初クロエを疑うというか牽けん制せいするような表情があって、割とそういうところを見せてくる性格なんだなあとフィードバックした部分もあります。設定的に戦闘においてはあまりかっこいい動きとかを出せない子なので、この三巻ではしっかり活躍させてあげられてよかったです。
みんな大好きソフィア先輩は、とにかく盛りまくったキャラにしようというコンセプトのキャラで、実際にそのようになりました。手なりで書いていると隙あらばポンコツっぷりをぶっこんでくるので、作者としては困るやら楽しいやら。「あちゅいっ」のシーンは我ながら気に入っています。それと美奈視点なので作中での説明は省きましたが、ラストバトルのソフィアは半ば意識を失っているために本来の剣技を完全な状態で使えるようになっています。ソフィアが普段見せている剣技は人を気付けないようにしているのと同様に、彼女が意識的に「華麗で優雅に見えるよう」にしているものです。実際ソフィアはそんなことを意識しなくても本質的に華麗で優雅な剣を振るえるのですが、本人は気が付いていません。自分で把握できていない版のアーネスト凶悪モードみたいなものです。本人が意識していないのでこの状態の剣技はクロエでも伝達できません。
ニーナは地味ながらこの物語で一番成長したキャラだと思います。今巻六章のクロエと友達についてやりとりするシーンは、書いていて「ああ、ニーナもちゃんと友達とふざけ合ったりできるようになったんだなあ」と親心的な何かがしみじみとしました。能力の組み合わせはもっとストックがあったのですが、あまりお出しできなくて残念。アスタリスクにしては直球のネーミングですが、これはこれで結構気に入っています。
あとはロヴェリカが初期設定だと男だったりとか、一人抜け駆けでアニメに出たヴァイオレットのこととかまだまだ触れたいことはありますが、紙面の都合でここまで。
さて、今回も素敵なイラストを添そえてくださったokiuraさん! 一巻が美み奈なとメインの五人、二巻が柚ゆず陽ひとソフィアメインの五人ときて、この三巻はニーナとクロエがメインの五人となりました。さすがのデザインセンスに、今更ながらほれぼれしてしまいます!
最後になりましたが今回も多くの方に助けていただきました。
まずは連載が終了したとはいえこの外伝のもう一人の生みの親である茜あかねしようさん、担当編集O氏、編集部の方々、漫画版連載時の講談社編集K氏、そしていつも応援してくださる読者の皆様に最大のお礼を申し上げたいと思います。
二〇一九年三月 三み屋や咲ざきゆう